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「副業」のつもりがスタートアップの中心メンバーに/カムスタ!キーマンのワケ:オリゼ・畑山ようこさん

創業以外でスタートアップに参加する理由は様々ですが、特に大手企業と比較した場合に意識すべきポイントは「リスクとのトレードオフ」です。仕組み化が進み、十分な利益基盤を持つ大手企業と異なり、その「基礎となる」部分を作っている最中のスタートアップはどうしても不安定になりがちです。その代わり、事業が上手くいった時の勢いや組織としての成長、劇的に変化する環境で得られる経験や知識など、この場所でなければ得られない体験が多くあるのも事実です。

大手からのスタートアップへの転職。このストーリーにセオリーや再現性はないかもしれません。しかし、そのきっかけを掴んだ人の物語には参考になる点も多いはずです。

大学時代、多くの友人たちが公務員や一般大手の企業を志望する中、希望の企業から内定をもらい、誰もが知る大手通信会社へ新卒で就職。その後、営業の現場で仕事に打ち込みつつ、手応えを感じる日々を過ごしていた。しかしある日、とあるきっかけでスタートアップへ転職することになった、そんな人が今回の連載の主人公です。

畑山ようこさん。まだ20代の彼女が手がけることになったのは「新世代の甘味料」。大手通信会社のセールスから一転、彼女はどうしてこの場所を新天地として選んだのでしょうか。

充実していた大手での仕事

楽天のグラノーラランキングで常にトップを走り続けている商品があります。販売開始から約2年(※2023年11月時点)で累計100万食を販売した「ORYZAE GRANOLA(オリゼ・グラノーラ)」です。砂糖不使用、無添加、グルテンフリーのグラノーラで、現代の自然派、健康志向を求める消費者、特にZ世代からの支持を取り付けているそうです。

このグラノーラに使われている甘味料「オリゼ甘味料(米麹発酵糖分)」を開発するのがオリゼです。「米麹で作った糖分」の開発秘話は以前、こちらの記事でもご紹介しました。

畑山さんは現在、同社で事業開発や商品開発、人事採用など、多岐にわたる業務を担当されています。特にスタートアップ経営における一大イベントとも言える資金調達では、大手企業で経験した交渉力を発揮して中心的な役割を担ったそうです。その転職のきっかけは大学時代の友人関係にありました。

「小泉(泰英さん・オリゼ創業者で代表取締役)とも同じ宇都宮大学だったんですが、小泉は学部も違ったのでほぼ面識はなく、ただ小泉の奥さんとは部活が一緒で仲が良かったんです」。

小泉さんの会社が人手不足という話を聞いた畑山さんは当初は副業のつもりでお手伝いを始めよう、そう考えて彼らの元に向かいます。しかし、畑山さんを待ち受けていたのは「想像とは違う」シーンでした。

「奥さんの方に久しぶりに会った時、生まれてすぐのお子さんがいらっしゃったんですが、夫の会社が伸びてきて忙しくなってしまったので、人が足りないからもう働き出したんだと言われて。そんなに大変なら手伝うよ、ぐらいの感じで話をしたんです。初めは土日だけとか平日の夜とか、私ができる範囲の副業ぐらいの感じで。お金もいらないし、なんて言いながら、商品の配送とかを手伝うのかなと思ったら社長から面接しようと言われて。実はその時、すでに東京の正社員みたいな話が進んでいたんです」。

今やっている仕事になんら不満もなく、充実した仕事生活を送っていた畑山さんにとっては、やや困惑する事態です。当然、畑山さんも不思議な面接の後、冷静に考えてスタートアップへ転職して大丈夫かしらと考えます。しかし、ここで畑山さんはふと立ち止まってある想像をしたそうです。

「(お手伝いのつもりだったので)何を作ってるかぐらいは聞いてましたけど、実際その中心となる価値や思いに共感するどころか、全く知らない状態でいきなり面接という流れになっていたので不安しかなかったです(笑。ただ、私にも夫がいて、彼も転職組なんです。全然違う業界への転職で何も分からないけど、とりあえずやってみようと思って転職してすごくよかったよ、という話を聞いていたんです。

それと、前職では女性で結婚して家族がいらっしゃる方に、総合職で大きく昇進している人がいなかった。もし、何か不公平が生じた時に、きっと不満に思ってしまう自分がいるだろうなと思ったんです。ちょうど、そういうタイミングが重なったんでしょうね」。

小泉さんたちの勢いと畑山さんの内省が重なった結果、オリゼに新たな力が加わることになります。

困難でも諦めない理由

大手での経験を活かし、オリゼでは業務全般を見つつ、仕組み化にも取り組んでいる畑山さん。当然ながら何もかもが揃っている大手とは異なり、全てをゼロから作る必要があります。大手とスタートアップ、畑山さんにその「ギャップ」について現場の声をお聞きしました。

ーーひょんなきっかけでスタートアップに参加することになったわけですが、当然、ポジションやロールありきで来たわけではないですよね。今はどういったお仕事をされているんですか

畑山さん:そうですね。全体的に表に立ってというよりは、全部署のバックで全てに関わるという仕事かなと思っています。資金調達含め財務の部分もやってますし、事業開発で企業様とのアライアンスもやってます。商品開発と新規事業で今、新しいプロダクトも作ったりとかもしてるんです。それと人事採用。何をやっているのか説明が難しいですね(笑。


ーー前職に比べて感じたギャップはどの辺りにありましたか

畑山さん:まず食品とIT機器では単価が大きく違うので、たとえ1件商談が決まったとしても、大きな金額にならないという不安は最初の頃感じていましたね。それと食品なので、アレルギーも確認しなければいけませんし、製造工場はどういった認証を取っているんだとか、知らない単語もたくさんあったので、そういった点も困りました。
あと、大手と最も異なるのが、そもそも最初の商談で自社の会社を紹介しなきゃいけない。前までは名刺を見せれば先方が理解してくれて分かった上で話をできたのに、それができない。こんなに会社紹介しなきゃいけないんだなっていうギャップはありましたね。


ーー畑山さんの場合、最初のきっかけがきっかけだけに、突然、そういったギャップだらけの現場にくると嫌になることもありそうですが

畑山さん:そうですね(笑。一時が万事、ゼロからのものが多かったのは確かです。ただ、オリゼがやってることって素晴らしくて、この会社は絶対に大きくなって悪いことはないというか、この会社が大きくなればなるほど、世界は良くなるって思ってるんです。ここで働いてる人たちも本気でそれを信じてるんですよね。

この人たちが諦めない限り、実現されると信じているので、この目の前にあるしんどいこと、面倒くさいことを引き受けて、みんなができる限り理想を言えるようにしたい。そうすれば、大変なことも結局は世界が良くなることに繋がっていくのかな、そう思うようになっています。

以上、畑山さんのストーリーはいかがだったでしょうか。起業やスタートアップの世界にはキラキラした立身出世の物語が目につきますが、実際、活躍している多くの人は畑山さんのように、ふとしたきっかけでこの場所を見つけるケースがほとんどです。ただ、そこでその機会をチャンスと思うか、それともリスクと感じるか。それは当然ながらその人の置かれている状況次第です。畑山さんはインタビューの終わり、次のようなコメントをくれました。

「今はグラノーラが先行していますが、オリゼとして食品だけをやりたいわけではないので、文化を守るであったりとか、健康を広めていくことであったりとか、日本食をグローバルに展開するであったりとか、そうしたいろんな思いをダイナミックに進めていきたいです。スタートアップのいいところは、大手企業が慎重にひとつ一つ承認を取って数年で実現するところを、一発目から思い切ってできるところですよね。やりたいと思ったことをみんなでパッと実現できればいいなと思っているので、そのための地固めをこれからも頑張りたいと思っています」(畑山さん)。


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