見出し画像

もう、誰も営業に悩まない世界へ/カムスタ!キーマンのワケ:SALESCORE・大久保友貴さん

カムスタ!キーマンのワケは、スタートアップの成長を支えるキーマンをご紹介いたします。創業者に注目が集まりがちなスタートアップもチーム戦です。その成長のウラにはかならず「鍵」を握るキーマンが存在しています。そんなスタートアップの縁の下の力持ちをピックアップしていきます。

今回はキーエンスから独立した後、SALESCOREでコンサルティング事業の責任者を務める大久保友貴さんにご登場いただきます。

営業組織の誰もが再現性を持って売れる「セールスイネーブルメント」を、営業管理のSaaS事業やコンサルティング事業を通じて、企業にインストールするのがSALESCOREです。大手SaaS企業や大手物流企業、大手人材企業など業種・業界問わず幅広く、導入された実績もあります。

そんなSALESCOREが、まだ会社の拠点も設けていない2018年頃から営業組織のコンサルティング事業を展開し、現在は事業責任者を務めているのが大久保さんです。

大久保さんは、SALESCORE代表の中内崇人さんと学生インターン時代に初対面を果たしていましたが、実は「お互いに第一印象は最悪だった」と明かしてくれました。そんな両者がタッグを組んで取り組む「セールスイネーブルメント」の可能性について探りました。

元キーエンス社員が明かす、データドリブン営業の真髄

── キーエンス時代の経験は、現在の仕事にも影響を与えていますか?

大久保:そうですね。キーエンスは、データを細かく取って可視化し、全てがデータにもとづいて意思決定される会社です。入社1年目から、過去のデータを分析し、KPIを設定して走る経験をしました。こうしたデータドリブンな文化が、今の仕事にも活きています。

── キーエンスでは、商品開発や営業戦略、採用まで、全てがデータにもとづいて決定されるそうですね。

大久保:私自身、キーエンス時代にはセンサの販売を担当していました。大カテゴリーで8種類くらい、細かく言うと200から300種類くらいありました。配属されたときにまず、担当エリアの商品カテゴリごとの売上推移や商品比率など、過去5年分のデータを分析します。そこから、どの商品にまだ伸びしろがあるのか、どの業種にどの商品が売れているのかなどを見極め、半期の戦略を立ててKPIの目標を設定し実行していました。

── 入社当初から徹底的にデータを活用する文化に浸かったことが、大久保さんのキャリアの礎になっているのかもしれませんね。

大久保:そうですね。キーエンスでは、どんな小さな決定でもデータにもとづいて行います。例えば、営業担当者の訪問計画も、過去のデータから最適な訪問頻度や順序を算出しているんです。また、オフィスの壁には「目的意識」という言葉が貼られており、社内では日々「意味合い」という言葉がとびかっていました。何のためにこの行動をしているのか、何を達成するための施策なのか、常に意識し続けさせられます。この「なぜ」を大切にする営業手法も、現在のコンサルティング事業につながっていると思います。

「セールスイネーブルメント」って何?

── そもそも「セールスイネーブルメント」とは、どんな概念ですか?

大久保:簡単に言えば、営業全員が成果をあげられるようになるという概念です。データドリブンに営業パーソンの成果創出や成長にロジックを持たせ、販売活動に再現性を創出したり、決められたスケジュールで育成していくことを指します。これをテクノロジーや仕組み作りで実現していくのがセールスイネーブルメントです。

── SALESCOREでは、SaaSの提供だけでなく、コンサルティングも実施していますよね。

大久保:ツールを導入してもメンバーが入力しない、データを可視化しても根性論のマネジメントが行われるといった問題が多くあります。SALESCOREは、会議のあり方やアジェンダ設定から全て作り直し、支援終了後もその仕組みが文化として根付くところまで支援しています。

── セールスイネーブルメントが社内実装されるまでの流れを教えてください。

大久保:セールスイネーブルメントの実現までには、大きく分けて3つのステップがあります。

まず、データの収集と整理です。多くの日本企業では、データが散在しており、分析できる状態にありません。まずはデータを一元化し、分析可能な状態にすることから始めます。次に、収集したデータを分析し、示唆を得ます。例えば、どの商品がどの業種に売れているのか、商談のどの段階で失注しやすいのかなど、多角的に分析します。そして、得られた示唆に基づきオペレーションを改善したり施策を実行します。データに基づき、新たな営業戦略やフローを立案します。ここが最も重要で、かつ難しい部分です。

── 難しいというのは、具体的に?

よくあるのが、データ分析までは行うものの、そこから具体的なアクションに落とし込めないケースです。例えば、SFAを導入したのに人が入力しなかったり、結局従来の非効率なExcel管理に戻ってしまったり。また、データを可視化しているのに、可視化データを分析するところでつまずいたり、根性論のマネジメントが行われているケースがあります。こうした事態を避けるため、SALESCOREはSaaSを提供するだけでなく、分析結果をもとに実際のビジネスに活かし売上をあげるところまでサポートしています。

特定企業の受注率が劇的改善、その秘密とは

「SALESCORE」

── SALESCOREの支援事例を教えていただけますか?

大久保:例えばよく発生していることではあるのですが、ある企業では営業の初回接点からクロージングまでのプロセスにおいてフェーズの後半部分に、失注の半数以上が偏っている課題を抱えていました。そこで失注理由を細かく分析し、顧客の意思決定プロセスにもとづく商談の流れを再設計しました。その結果、営業の勝ちパターンを見出すことができ、それをITと業務の仕組みに落とし込んでいきました。

── なるほど。同事例におけるセールスイネーブルメント達成プロセスを詳細に教えてください。

大久保:細かく分けると2つのステップで表せます。ステップ1は、顧客の意思決定プロセスの可視化です。まず、特定の商材がどういう顧客の意思決定プロセスを経て導入が決まるのか、社内でどういう検討がなされ、どういう比較がなされて最終的に製品が選ばれるのかを、過去のデータや顧客ヒアリングをもとに整理しました。ステップ2として、整理した情報をもとに、営業プロセスを再設計しました。従来、営業パーソンの主観で決めていた商談フェーズを、顧客視点で見直すことで、顧客の検討状況に合わせた適切なアプローチが可能になりました。

── 営業成果を上げるためのコツや注意点はありますか?

大久保:1つ目は、失注理由を詳細に分析することです。クロージングまでの各フェーズにおける失注理由を見返し、どの段階で、どういう理由で失注しているのかを整理しました。その結果、本来やるべきアクションが抜け落ちてしまっていたり、ハイパフォーマーのみが実行していることがわかります。2つ目は、勝ちパターンの構築です。データ分析や顧客インタビューから勝ちパターンを言語化し、営業組織全体に共有、標準化することで、組織全体の成果向上につなげられます。

── お話しの中で、やはり「顧客視点」が重要なのだと感じました。

大久保:その通りですね。営業側の都合ではなく、顧客がどのように意思決定をするのかに焦点を当てることで、より効果的なアプローチが可能になります。それにより、営業サイクルが短縮できたり、社内で客観的なデータを基にした建設的な議論が増えたりする効果も期待できます。

ゼロから1兆円企業へ、知られざる創業秘話

SALESCORE CEO 中内崇人さん

── SALESCORE代表の中内氏とは学生時代に一度会ったことがあるそうですが、当時はお互いに良い印象ではなかったとか?

大久保:学生インターンをしていた時代に一度会ったときは、お互い「嫌なやつだな」と思っていたんです(笑)。でも、実際に一緒に仕事をしてみると、彼のビジョンやパッションに圧倒されました。自分一人では絶対にできないことを、彼と一緒だからこそできると感じたんです。

── 創業から現在までを振り返るといかがでしょうか?

大久保:創業初期は、まずコンサルティング事業から始めました。中内は営業経験がなかったので、実際に対価をいただいてコンサルをしてみようと。私自身は、キーエンスのようなデータドリブンや仕組み作りによって、営業パーソン全員が成果を上げられる世界を実現したいという思いがありました。

── 現在のSALESCOREの体制が固まるまでに、どれくらいかかりましたか?

大久保:2年半くらい試行錯誤しましたね。最初は何をするかも未定で、ほとんどのメンバーが業務委託でした。でも、そこに集まったメンバーは本当に優秀で、みんな大きな志を持っていました。これは中内の姿勢がそうさせたんだと思います。中内はオフィスもなく、何者でもないときから、1兆円の会社を作ると目標を掲げていました。今でもその目標は変わっていません。そういう大きな旗を掲げる姿に、私自身も大きな刺激を受けました。

── スタートアップとして、事業拡大の潮目が変わったタイミングはありましたか?

大久保:大手人材企業様の案件は、社長直下のプロジェクトとして、皆様が前のめりでやっていただいたおかげで大きな成果を挙げられました。その取り組みからその他大手企業への導入につながりました。事業が拡大するまでにSaaS一本で勝負することを検討していた時期もありましたが、結果としてコンサルティング事業も併走させる判断が、今の規模感につながっていると思います。

── 最後に、今後を見据えて、今注力していることを教えてください。

大久保:さらなる事業拡大に向け、全社的に注力しているのが採用です。今期にあと40人ほど採用したいと考えています。特にコンサルタント系の人材を募集しており、私自身も毎日面談を実施している状況です。最近はありがたいことに、お客様からの需要(ニーズ)よりも供給(人手)が足りない状態が続いているので、積極的に採用を進めて、さらにセールスイネーブルメントの社会実装を進めていきたいと思います。


SALESCOREの採用情報はこちら


カムスタ!運営元 CyberAgent Capitalからスタートアップの最新情報が届くLINE公式アカウントはこちら


最後まで読んでいただき、ありがとうございます! これからもスタートアップのリアルをお伝えしていきます。